2026年10月、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は第1038/2026号大統領令に署名し、性的少数者の権利擁護を明記した新たな「国家人権戦略」を正式に承認した。10月12日に署名され10月15日に公布された本戦略文書は、同国における基本的人権の推進目標を定めており、少数民族、国内避難者、障がい者、子ども、退役軍人、戦没者遺族とともに、性的少数者を人権侵害の危機に直面し得る重点支援対象に明記している。

現地報道によると、本指針は性的少数者を標的としたヘイトスピーチ、差別的取り扱い、ヘイトクライムの抑止を重点課題に掲げている。差別からの法的救済の拡充をはじめ、捜査機関による憎悪犯罪の徹底的な立件、保健医療や公教育へのアクセス改善、被害者に対する無料の公的法律援助の提供、さらには警察官や司法関係者を対象とした専門研修の実施など、実効的な施策目標が盛り込まれた。

ウクライナでは同性間の性行為自体は処罰の対象外とされているものの、伝統的な家族観を反映した憲法規定により婚姻は男女間の結合と定義されており、同性パートナーシップの公的承認には至っていない。職場における差別禁止や軍隊への勤務、法的性別の変更手続きは認められている一方、商業施設や公共スペースでの包括的な差別是正は途上にある。今回の人権戦略は、法制度の不備を行政主導で是正していくための強固な政策的根拠となる。

分析によれば、本戦略の承認はウクライナによる欧州連合への加盟交渉を後押しする極めて重要な法制度改革とみられている。宗教および市民社会の観察筋によると、本方針は2014年の連合協定に基づく人権上の国際公約に沿ったものであり、国内法を欧州の共通基準へと近づける狙いがある。安全保障上の極めて困難な局面にあっても、基本的人権と多様性の尊重を国家戦略として前進させたことは、民主主義陣営との連帯を深め、公正な市民社会を築くための歴史的な一歩として高く評価されている。

ヨーロッパ編集部:ルーカス・バッカー

資料出典

ウクライナ大統領公式ウェブサイト(大統領令公報)