誰もいない病院の廊下

この画像はイメージであり、記事内容とは直接関係ありません。画像出典:Jorryn Morais

10月15日、NHSイングランドは患者向けと職員向けの2つの更新指針を公表し、医療機関におけるトランスジェンダーの単一性別施設の利用ルールを大きく変えた。新指針では、トランス女性は女性病棟、トランス男性は男性病棟に入院できず、すべてのトランス患者は出生届の性別に沿って病棟に配置される。「臨床的に適切でない」場合にのみ、個室などの代替措置が取られる。適用対象は急性期、精神保健、地域医療のNHSトラストおよびNHS資金を受ける民間医療機関だが、救急科、緊急治療センター、小児科は除外される。職員についても、更衣室、シャワー、トイレは生理的性別で利用することとされ、各トラストは既存施設の監査と、トランスやノンバイナリーの職員向けに個室トイレや個別に施錠できる個室を備えた代替施設の整備を求められた。

指針は「単一性別のサービス(入院施設など)は生理的性別に基づいて提供されるべきだ」と明記。トランスの人々は「出生届の性別に沿って収容されるべき」とし、差別リスクを避けるため個室の提供も選択肢とした。従来の指針はトランスの患者・職員が性自認に合った施設を利用できるとしていたが、2025年4月の英最高裁For Women Scotland判決(平等法の「性」は生理的性別を意味し、「女性」は生物学的女性を指す)を受けて撤回されていた。約2か月前には平等・人権委員会(EHRC)の単一性別空間に関する規範が正式に発効し、生理的性別基準がさらに固められた。

反応は真っ二つに割れている。トランス人権団体のTransActualとTrans+ Solidarity Allianceは共同声明で「この指針は資源の逼迫した病院の現実には耐えられず、実行不可能な運用上の難題を生む。政府がこの法的混乱を収拾できず、患者ケアより政治を優先しているのは悲しい」と批判した。一方、ダーリントンの看護師ベサニー・ハチソン(Bethany Hutchison)はNHSイングランドの「明確で必要な指針」を歓迎し、「試されるのはNHSトラストが実際に従うかどうかだ」と述べた。ハチソンは今年1月、雇用審判で勝訴している。審判所は、ダーラム・ダーリントンNHS財団トラストがトランスの同僚の女性更衣室利用を認めたことが、看護師たちに「敵対的で威圧的、屈辱的で品位を傷つける環境」を作り出したと認定した。

分析者は、最高裁判決から18か月を経てNHSが生理的性別原則を初めて体系的に実装したものだと指摘するが、運用面の課題は大きい。個室はもともと不足しており、病院は終末期患者や感染症患者とトランス患者のニーズのバランスを取らねばならない。出生時の性別での配置は新たな安全リスクも生みかねない。タイムズが報じた事例では、トランス男性が男性精神科病棟に配置されて1時間以内に性的暴行を受けた。職員施設の監査と改修には設備投資も必要だ。NHSスコットランドとNHSウェールズはまだ追随しておらず、イングランドの指針は英国のトランス医療環境の引き締まりを示す新たな節目とみられている。

ヨーロッパ編集部:ルーカス・バッカー

情報源:NHSイングランド、PinkNews、タイムズ、テレグラフ、PA通信、Radio Xおよび公開報道(情報提供:PinkNews)

参考リンク:
https://www.thetimes.com/uk/healthcare/article/nhs-bars-trans-women-female-wards-changing-rooms-cnw5fzm95
https://www.radiox.co.uk/news/uk-world/transgender-patients-to-be-placed-on-wards-ac/
http://www.leighjournal.co.uk/news/national/26640964.new-nhs-guidance-confirms-exclusion-trans-women-patients-female-wards/
https://www.channel103.com/news/uk/transgender-patients-to-be-placed-on-wards-according-to-their-birth-sex-nhs-england-decides/
https://dustymasterson.substack.com/p/nhs-finally-caves-in